そのおなかの痛みではこんな病気を疑います

内視鏡内科 消化器内科(胃腸内科)内科

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そのおなかの痛みではこんな病気を疑います

お腹が痛い、は何の病気?

お腹が痛い!何の病気だろう?

原因がわからないと不安になりますし、不安だとお腹の痛みも強く感じられます。 我々、内科の医者も、痛みの部位から病気を推測し、胃カメラや大腸カメラなどの内視鏡検査、CT、血液検査を行って診断し、治療をします。 私たち医者はすべての病気を網羅して診断するのではなく、最初はよく起こる病気をメインに推測します。見立てる、とも言いますね。 代表的な病気を痛みの特徴をザックリと説明したいと思います。もちろん例外もたくさんあります。病院に行く前の参考にしてくださいね。

みぞおちあたりの焼けるような痛み、熱を持った感じ
機能性ディスペプシアを疑います。
みぞおちのキューっとなる痛み
胃潰瘍と十二指腸潰瘍を疑います。
みぞおちと背中に持続する激しいお腹の痛み
急性膵炎を疑います。
あばら骨の右下、冷や汗が出て、呼吸も苦しくなるようなお腹の痛み
胆石発作、胆嚢炎、胆管炎を疑います。
右側または左側の腹痛と、背中へ広がる痛みと、赤い尿がでるとき
尿路結石を疑います。
突然のお腹左側の痛みと、赤い便
虚血性腸炎を疑います。
右下腹部の差し込まれるような持続する強い痛み
虫垂炎、大腸憩室炎
お腹が痛い、お腹が鳴る、ガスがしょっちゅう出る
過敏性腸症候群を疑います。
下腹の痛み
便秘症、過敏性腸症候群、膀胱炎、婦人科疾患を疑います。

みぞおちあたりの焼けるような痛み、熱を持った感じ(機能性ディスペプシア)

機能性ディスペプシアでは、ストレスや不眠などにより、胃腸の神経過敏状態を起こし、痛みを感じることがあります。吐き気やゲップが代表的な症状ですが、痛みを訴える患者さんも多くいます。
私自身の体験をお話すると、医師として駆け出しの頃、上司の理不尽な𠮟責に数秒ほど胃の辺りが、カーっと熱くなる感じを覚えたことがあります。そのあとも同様の出来事が続き、食欲がなくなってしまったことがありました。当然、ストレスで不眠になり、酒量も増えて生活は乱れ、心身ともに大変な日々でした。今思えば、これが機能性ディスペプシアの症状と思われます。

胃カメラで調べることが多い病気ですが、調べてみると患者さんの予想に反して、胃カメラでは何もみつからず、
「なにもみつからなかったですよ」
と、説明することの多い病気です。
「機能性」とは、内視鏡などで症状の原因になるような異常がみつからないにもかかわらず、症状があることを示します。
「だから治療の必要なし」
と、結論付けられることの多い病気です。

「胃カメラでは大丈夫」と説明されると、確かに心理的な影響の大きい病気ですので、症状が軽くなったり、消えたりすることが多いと実感します。ただ病気がないわけではなく、機能性ディスペプシアがあるわけですから、きちんと説明されないと患者さんはモヤモヤしてしまいます。

当院では、この「機能性ディスペプシア」の可能性をきちんと説明したうえで、ストレスや不眠を解消することをお勧めしています。ただ簡単にストレスをマネジメントできればこの病気にはならないわけで、治療薬をご希望の方には、胃酸を抑える薬や漢方薬、時には抗不安薬のような精神安定作用のある薬をお勧めします。

ストレスがきっかけになる病気ですので、胃カメラがストレスにならないように、当院のような麻酔を使った負担の少ない胃カメラを選択することが良いと思います。
胃内視鏡(麻酔使用)はこちら

時に、「胃カメラで大丈夫」な胃の痛みには、慢性膵炎などの膵臓疾患が隠れていることがあります。腹部エコーや血液検査などもお勧めすることがあります。また当院には、超音波内視鏡という、膵臓検査の強力な検査機器も備えております。
内視鏡を使った「すい臓がん検査」はこちら

みぞおちのキューっとなる痛み(胃潰瘍と十二指腸潰瘍)

みぞおちの差し込むような痛み、焼けるような痛みが代表的な症状です。
高齢者では痛みなどの症状がないこともあります。
実際のところ、上述の「機能性ディスペプシア」とよく似た症状です。
症状だけでは、痛みの特徴だけでは、胃潰瘍と機能性ディスペプシアを区別することが難しいのが現実です。
胃カメラを受けるとはっきりしますが・・。

重症になると話は別です。機能性ディスペプシアでは、次のような症状はありません。
そのサインとは、「タール便」と「吐血」です。
タール便とは、胃潰瘍から出血した血液が胃酸や腸液により変化して、黒いドロドロした下痢状の便となることです。決して固形ではありません。
吐血とは、文字通り、「血を吐く」ことですが、これも胃潰瘍から出血した血液が、胃酸によって赤黒く変化していることが多いです。

これに加えて、胃潰瘍から出血する訳ですから、全体的な血が少なくなって、貧血になりますので、「顔面が真っ青」になります。

救急車を呼ぶサインでもあります。

原因は主に2つ。
ロキソニンやボルタレン、カロナールなどの解熱鎮痛剤の服用と、ピロリ菌です。

いままで胃カメラはしたことない、ピロリ菌検査も健診でしたことがない方、
親兄弟に胃癌やピロリ菌治療をした人がいる方、
是非、胃カメラを受けておきましょう。

解熱鎮痛剤を飲まないと肩や腰の痛みがコントロールできない方は、レバミピドやセルベールのような粘膜保護作用のある胃薬を一緒に飲むと、胃潰瘍の予防になります。

胃潰瘍が疑われた時の、とりあえずの対処法は、薬局でガスター10を買い求めることでしょう。効果は低いものの、胃潰瘍の治療になります。

みぞおちと背中に持続する激しいお腹の痛み(急性膵炎)

急性膵炎を考えましょう。急性膵炎は重症化することがあり、注意が必要な病気です。大概の痛み止めは効果がありません。入院してCTなどの検査と点滴治療が必要な病気です。原因は、アルコールの飲み過ぎがほとんどです。胆石によっておこる急性膵炎もありますので、健診で指摘されている方、胆石症をお持ちの家族がいる方はご注意ください。

あばら骨の右下、冷や汗が出て、呼吸も苦しくなるようなお腹の痛み (胆石発作、胆嚢炎、胆管炎)

発熱を伴うこともあります。発熱は細菌感染を意味しており、重症化するサインでもありますので注意が必要です。胆石発作、胆嚢炎、胆管炎はすべて胆石がもとで起こります。胆石は、肥満体型、40歳以上、出産経験の多い女性に多く起こります。胆石は、胆道系と言って、肝臓と十二指腸をつなぐ管の中にできる石です。半数以上は痛みも何もださない、おとなしい胆石です。しかし、胆石発作や胆嚢炎、胆管炎を発症すると多くの場合、残念ながら入院が必要です。抗生剤で治療した後、特殊な内視鏡治療や外科手術で取り除く必要があります。生活習慣や遺伝が関係しています。ご家族に胆石をもっている方がいるときは、積極的に検査を受けていただいた方が良いと思います。腹部超音波検査(エコー)で簡単に検査ができます。

右側または左側の腹痛と、背中へ広がる痛みと、赤い尿がでるとき(尿路結石)

尿路結石が疑われます。男性に多い病気です。夏に多く発生します。水分不足や脱水がきっかけになるようです。大の男があぶら汗をかくほどの、七転八倒の強い痛みとなりますが、多くの場合は鎮痛剤だけの治療となります。発熱があったりして、感染を伴う場合は抗生剤の治療が必要となります。残念ながら結石が大きくて症状がとれないときは、体外から衝撃波を与えて結石を砕く治療が行われます。これは泌尿器科が対応しますが、入院が必要です。

突然のお腹左側の痛みと、赤い便(虚血性腸炎)

虚血性腸炎を疑います。この病気は、高血圧や動脈硬化と関係しています。そのため、高齢の方に多く、やや女性で多い病気です。大腸の部位のひとつに、下行結腸という部位があります。この下行結腸に虚血性腸炎は起こりやすく、お腹の左側にあるため、左側の痛みなります。重症化することは少ない病気です。ただ痛みの激しさと赤い便、下血といいますが、この病気の印象の強さから、不安をとても強くさせる病気です。多くの場合、入院で経過を見ることになりますが、点滴と短期間の絶食(食事をひかえること)で、回復します。まれに再発すこともあります。便秘がきっかけになることが多く、回復後には便秘の予防のために、便秘薬の服用や水分をこまめにとる、歩くなどの運動をすることが必要です。

右下腹部の差し込まれるような持続する強い痛み (虫垂炎、大腸憩室炎)

虫垂炎(ちゅうすいえん)は盲腸(もうちょう)とも呼ばれます。虫垂は、大腸にくっついた付属品のようなものです。現代の人類では、虫垂が果たしている役割はありません。何も役に立っていない虫垂ですが、ひとたび虫垂炎となると厄介な臓器となります。時に虫垂炎は破裂することがあります。多くの場合糞便が虫垂に詰まって起こることから、破裂すると糞便の中の細菌がお腹の中にばらまかれることになります。これは、腹膜炎(ふくまくえん)といって、緊急手術が必要となる、言い換えれば命に係わる重大な容態です。腹膜炎を診断する一つのサインは、右下腹部を指で押して、離すとわかります。押している時より、離した時の方が痛い時、腹膜炎を起こしている可能性があります。これを反跳痛(はんちょうつう)と呼びます。

小児や高齢者では、表題にあげたような右下腹部の痛みといった典型的な症状を出さないこともあります。吐き気だったり、みぞおちの痛みだったり、さまざまな症状を出すことがありますので、注意が必要です。手術の他に、抗生剤などの点滴治療で、一時的に症状を抑えることができる場合があります。しかし、このような点滴治療で一時的に回復したとしても、再度虫垂炎を起こして、結局手術になるケースが多いようです。

大腸憩室炎は紛らわしい病気です。そして、よく見られる病気です。
虫垂炎と同じ部位、右下腹部に起こることが多く、症状もよく似ています。古くから糞便のなかの細菌が原因で起こるといわれていましたが、肥満や肉類を好む食生活などの生活習慣が密接に関わると、近年は報告されています。
でも、そもそも憩室とは何でしょうか?
憩室とは、大腸の壁が腸の外に袋状に飛び出したものを言います。便秘ではお腹が苦しくなりますね。これは、便で腸がパンパンに押し広げられている状態です。腸の壁に圧力がかかると、壁の中の構造の弱い部分に負担がかかり、そこが袋状に腸の外へと飛び出し、憩室になると考えられています。
必ずしも憩室炎という病気を起こすとは限りませんが、年齢とともに憩室の発生頻度は上昇し、80歳以上の人では約75%にみられると報告されています。

実際、大腸内視鏡検査でよく見つけられるため、画像をご覧いただきながら説明することがあります。
憩室炎は、虫垂炎のように破裂することは少なく、緊急手術になる病気ではありません。虫垂炎と区別するためにも、CTなどの検査をしっかり受ける必要があります。
ただ、CT画像では、大腸がんと見分けがつきにくいことがあります。大腸内視鏡を後日受けておく必要があります。ガイドラインでは、症状消失後1~3カ月時点が推奨されています。
治療は、抗生剤などの薬物治療で回復するケースがほとんどです。
予防としては、運動や繊維質の摂取など便秘治療とよく似た生活習慣が、憩室の形成および憩室炎の発生の予防に役立つと報告されています。

お腹が痛い、お腹が鳴る、ガスがしょっちゅう出る(過敏性腸症候群)

過敏性腸症候群が疑われます。便秘や下痢などの排便の症状が伴います。便の状態は、硬い便、ウサギの糞のような小型の便、軟便、水のような便など様々です。ストレスに関係があると考えられており、心療内科的な治療が必要な場合があります。治療は、生活習慣の改善や、腸内細菌バランスの改善(整腸剤)、繊維の多い食事(野菜)などです。下痢や便秘症状に応じて内服薬を処方することがあります。大腸がんが同じような症状をだすことがあり、念のために、大腸カメラで大腸の検査を行っておく必要があります。

下腹の痛み(便秘症、過敏性腸症候群、膀胱炎、婦人科疾患)

多くは、便秘症や過敏性腸症候群など大腸の病気です。直腸やS状結腸という大腸の部位がこの下腹部にあります。症状に応じて便秘薬や下痢止めを内服する必要があります。大腸がんのサインの可能性もありますので、大腸カメラを受けることをお勧めします。 膀胱は直腸の隣にあります。膀胱炎も同じような症状を出しますので注意が必要です。排尿する時の痛みや血尿が出ることがあります。

女性の場合は子宮や卵巣などの婦人科の病気を考えておく必要があります。異所性妊娠(いしょせいにんしん)は、卵管などの子宮以外の場所に胎児が定着することを言います。子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)は、子宮の粘膜が子宮以外の部位に飛び火して、月経困難症となる病気です。子宮や卵巣などの女性に特有の臓器は大腸などの消化器系と隣り合わせの位置にあります。婦人科を受診する必要がありますが、婦人科とは関係がないと診断されたときには、大腸カメラなどの消化器系を検査する必要があります。

やはりお腹といえば、胃腸を主体とする消化器系のトラブルが多いですね。胃カメラや大腸カメラでの診断が主体になると思います。婦人科や泌尿器科の病気の可能性もあり、必要に応じてCT検査や専門診療科の診察も受けましょう。まずは、当院のような消化器系のクリニックに相談し、手軽に検査を受け、適切な診断を受けた上で、必要があれば専門病院へ紹介受診するのがよいかもしれません。