内視鏡の症例 アニサキス症
アニサキスとはどんなものか?
アニサキスは、魚類に寄生する寄生虫です。白色で、長さは2‐3cm程、幅0.2㎜程のヒモ状の寄生虫です。ヒラメ、サバ、イカ、サンマ、アジ、ブリ、タイ、ニシン、サケなど、日常でよく口にする魚類に生息しています。内臓に多く生息しますが、その身にも生息しています。
私は魚釣りもしていますが、以前釣ったイカをさばいていたときに、内臓(イカワタ)にたくさんのアニサキスを発見したことがあります。イカの塩辛はわたしの好物ですが、すこしショックでした。
アニサキス症の症状とは?
上記の刺身や寿司を食べたあと、8時間以内に激しい胃の痛みで発症します。
胃カメラの画像をお示ししますが、胃の壁はあつくはれ上がり、一部に出血も起こります。症状は波があることが多く、激しく痛んだり、すこし落ち着いたりを繰り返すことがあります。胃の中に感染すると比較的早く症状は出ますが、その奥の腸に感染すると、数日後に下腹部痛など、胃とは違う部位に痛みを感ずることがあります。しかしながら、胃の痛みなど腹痛を感じない方も中にはいて、別の目的(胃がん治療後の経過観察など)で胃カメラをして、たまたま見つかるアニサキス症もあります。
気をつけたいのは、アニサキス症でも、体の反応が激しい時は、蕁麻疹や発熱のような全身の症状が出ることがあります。胃の痛みはもちろんありますが、なにが原因か最初ははっきりしないこともあります。
アニサキス症はどのように見つけるか?
これまで当院で見つかったアニサキス症の患者さんは、刺身などの生食を食べて比較的短い時間で発症されていいたため、診断は容易でした。激しい胃痛のため、食事もままなりませんので、胃カメラをすぐに行います。食事した内容が胃の中にあると、アニサキスを見つけるのは至難の業になります。
画像に示すとおりに、白い寄生虫が、その頭部を胃壁に突っ込んでいる様子が見られることがあります。これは胃酸にビックリしたアニサキスが胃壁に隠れようと入り込んでいるように見えます。この頭部を突っ込んでいることが、激痛につながるようです。黒く変色した血液が胃の内部にそこかしこに見られることもあり、いろんな部位に頭を突っ込もうとしていたようにも見えます。
アニサキス症はどのように治療するのか?
胃の内部にいるときは、胃カメラ先端から伸ばした、鉗子という器具でアニサキスをつかみ、胃壁から除去します。アニサキスの頭部はがっちりと胃の壁を噛んでいることが多いため、少し抵抗がありますが、たいていはすっぽりと頭部から除去できます。鉗子でつかんだアニサキスはそのまま内視鏡の内部から体外へと取り出すことができます。アニサキス症で腹痛の患者さんは、アニサキスを除去すると、ケロッと直ってしまうので、内視鏡医としてもとてもやりがいがある仕事です。
アニサキス症を予防するには?
〇 アニサキスは生魚から感染します。寿司や刺身を避けるのが一番です。
〇 アニサキスは比較的大きな寄生虫です。目視できることがあります。生魚を調理したり、食べたりするときに確認できることがあります。
〇 アニサキスは熱に弱い寄生虫です。70℃では瞬間で、60℃では1分程度で死滅する寄生虫です。
〇 アニサキスは、低温にも弱い寄生虫です。-20℃以下で24時間以上冷凍するとよいと言われています。
〇 アニサキスは傷がつくとすぐに死滅します。細かく刻むこと、すなわち、たたきやイカそうめんのように細かく調理することで、アニサキス症の確率は低くなります。
〇 調理している手から別の具材に感染することがあります。包丁やまな板を交換すること、まめに洗浄することでアニサキス症の確率は低くなります。