便潜血の症例写真と解説

内視鏡内科 消化器内科(胃腸内科)内科

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便潜血の症例写真と解説

内視鏡の症例 便潜血

内視鏡の症例 便潜血
便潜血陽性で見つかった、大腸憩室(だいちょうけいしつ)の画像です。大腸の壁にたくさんの穴が開いています。穴の奥には血管があることが多く、出血の原因となります。この出血が便潜血陽性となり得ます。大腸憩室の出血は時に入院や輸血を要することがあります。大腸内視鏡で多くみられる疾患の一つです。
内視鏡の症例 便潜血
正常の肛門の画像です。赤黒い痔の塊は見えません。
内視鏡の症例 便潜血
正常な大腸の画像です。大腸の壁には穴がなく、便の通り道である管腔は大きく開いています。
内視鏡の症例 便潜血
進行大腸がんの画像です。大腸がんは大きく進展し、大腸の便の通り道をほぼ塞いでいます。腸閉塞(イレウス)という深刻な状態になりつつあります。このような進行した大腸がんでは便潜血は必ず陽性となります。一刻も早く大腸内視鏡で診断を確定し、治療方針を立てる必要があります。
内視鏡の症例 便潜血
内視鏡で見つかる痔疾の画像です。画面の中心に向かってに赤黒く隆起した痔の塊が見られます。この患者さんは、出血や肛門痛といった自覚症状がなく大腸内視鏡で初めてわかりました。大腸がんは見つかりませんでした。もし2年後に便潜血が陽性なら、大腸内視鏡を再検する方針としました。

便検査で精密検査を、と言われたら

便検査で精密検査

会社の健康診断や人間ドックで「便検査」ってありますよね。
これって何の検査か、ご存知でしょうか?

便検査は「大腸がん」の検査です。正確には「便潜血(べんせんけつ)」と言います。

でも、便を取るのって結構面倒ですし、ついうっかり当日に忘れてしまうこともありますよね。2回分を別々の日に取るはずだった便の採取を、ズルして当日1回で済ませたりして。 「血液もとるのに、一体これって重要なの?」
とも、思ってしまう検査ですね、便潜血って。実は医者の私も医学生の頃そう思っていました。

でも、便潜血検査異常は重要な情報です。医者になって痛い思いをしました。
まず心に留めておいていただきたいことは、全ての健診は精密検査の入り口であることです。そして何か異常があれば、絶対に放置してはならないこと、です。

医師として、苦い経験

医師として、苦い経験

私は当時、駆け出しの研修医でした。60歳代の男性で、慢性肝炎で入院している患者さんに便潜血をするように上司から指示されました。内科検査の基本方針としては、安価な検査から始まって徐々に高額で高度な検査をオーダーしていきます。便潜血は診療費が90円と安く、大腸がんから発生する微小な血液を検出することから、大腸がんのスクリーニング検査としては有効です。私は上司の指示に従って、便潜血検査をオーダーしました。
結果は陽性でした。当時はさらなる精密検査として、大腸内視鏡か、注腸検査(大腸X線検査)のどちらかが良く行われておりました。
患者さんに便潜血が陽性だったことを説明し、研修していた病院が大学病院だったこともあり、当時最新の精密検査方法だった、大腸内視鏡検査を受けることをお勧めしました。大腸内視鏡は、もちろん研修医の私ではなく、上司である指導医が行います。

しかし、その患者さんは、
大腸カメラは痛いと聞いているので、やっぱりイヤです。
と、お答えになりました。

医局に戻って、医学書を紐解き、便潜血検査について調べました。便潜血が陽性であっても約30%の方には大腸に病気がないことを知りました。
この情報を患者さんに話しても、やはり大腸内視鏡を受けたくないとのお答えでした。たしかに、便潜血が陽性であっても、 ポリープやがんが見つかることは少ないな、と研修中に感じていたので、
今回は見送りましょうか。
と、患者さんにお話ししました。そして、
患者さんのご希望で、今回は大腸内視鏡をとりやめることにします。
と、指導医に報告しました。

その患者さんは、その後しばらくして退院し、指導医が担当する外来通院をすることになりました。外来で再度、指導医から大腸内視鏡を勧められ、納得された患者さんは大腸内視鏡を受けることになりました。

大腸内視鏡検査当日には、私も入院担当をしていたこともあり、介助者として参加させていただきました。すると、S状結腸に大きな大腸がんが見つかりました。S状結腸は大腸がんの好発部位です。あともう少しで便の通り道が塞がって、腸閉塞を起こす可能性のある、正真正銘の進行大腸がんでした。患者さんが大腸内視鏡を受けることなく、腸閉塞の症状を出していたら、患者さんは大腸がんで命を落としていたかもしれません。私が言った、「今回は見送りましょう」の一言で。

幸いにも手術が可能な進行度(ステージⅢ)であったため、開腹手術で治療することができましたが、
1年後には肝臓などへ転移してしまい、手術はできなかったかもしれない。
患者さんの手術後に聞かされた指導医の一言です。

指導医からは強く叱責されることはありませんでしたが、精密検査として大腸内視鏡を受けることの重要性が身に染みてわかりました。それ以来、便潜血陽性の患者さんには必ず大腸内視鏡をお勧めすることにしています。

大腸がんが必ず見つかるわけではありません

便潜血陽性の方に必ず大腸がんが見つかる訳ではないということ、これも重要な事実です。多くの場合、出血や痛みといった自覚症状のない痔疾が便潜血として検出されていることも事実です。そのほか大腸憩室のような安定していれば治療の必要ない病気が見つかることもあります。実際、大腸がんが見つかる確率は、便潜血陽性者のうち1%程度と思われます。ポリープも含め、全く何も見つからなかったという方も20‐30%程度あります。
大腸がんは見つからなくても、良性ポリープが見つかることがあります。私の経験では50%程度の方に何らかの良性ポリープが見つかることがあります。これらの良性ポリープをがんになる前に切除することで大腸がんを予防できます。良性ポリープの切除は、基本的に大腸内視鏡で行うことができます。

40歳、いやもっと若くから

当院にも、便潜血陽性の患者さんが多く受診されます。その際に、20歳以上のみなさんには全員、大腸内視鏡をお勧めしています。
確かに、大腸がんは40歳を境に発症率が上昇します。30代の若い方には、大腸がんのリスクは低いと説明しておりますが、私の経験では、若年者の大腸癌が増加していると実感します。
20代の方に、早期大腸癌を発見することもありますし、10代の方に、前癌病変である腺腫性ポリープを見つけることもあります。
ただ、大腸内視鏡をお勧めするのは、基本的に身体が元気な方です。80歳以上のトイレに不自由のある方には、下剤を服用したあと頻回にトイレに通わないといけない、このような検査はお勧めしないこともあります。

便潜血が陰性でも安心できません

便潜血が陰性であれば、大腸内視鏡を受診しなくても良いという訳ではありません。というのは、最近の知見では、進行大腸がんがあったとしても、その約30%は便潜血検査陰性と報告されています。これは、便潜血検査の偽陰性(ぎいんせい)と呼ばれます。健診結果は精密検査へのきっかけとしては大変有効ですが、すべてではありません。健診結果のみで完全に問題なしと思ってはいけないことも事実です。やはり40歳を過ぎたら、大腸内視鏡を一度は受診していただきたいと思います。

大腸内視鏡を安楽に受けていただく当院の工夫

精密検査、大腸内視鏡への不安や抵抗感をなくすための工夫として、当院では以下のような工夫をしております。

細い内視鏡の使用

細い内視鏡を使うことにより、腸への負担を軽減することができます。

炭酸ガス送気

大腸を観察するには腸を膨らますことが必要ですが、その際に炭酸ガスを使用します。炭酸ガスは体に速やかに吸収されるため、検査後にお腹が張るといった不快な症状を回避することができます。

水浸法による大腸内視鏡挿入

少量の水(全量で100㏄ほど)を注入しながら、内視鏡を挿入することにより、内視鏡は滑りやすくなり、腸への負担を減らすことができます。

適切な鎮静剤(麻酔)の使用

大腸内視鏡検査では、内視鏡という異物を体内へ入れられるため、検査を受ける方は不安や恐怖感を少なからず感じます。鎮静剤使用により、これらの精神的ストレスを払しょくすることができます。以前のような少し意識のある鎮静剤ではなく、生体モニターのデータ情報を基にした、麻酔深度を重視した安全で有効な鎮静剤投与を行います。
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下剤を飲まない大腸内視鏡の提供

大腸内視鏡を受けるにあたって、2リットルの下剤を飲むのが苦しいという方は多いと思われます。下剤を胃内視鏡で注入することで、下剤を飲む苦痛を回避することができます。しかし下剤を飲むことに抵抗のない方に無理に勧めることはありません。

大腸に不安を感じる方には、自信を持って、当院の大腸内視鏡を受けることをお勧めします。
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