すい臓がんの症例写真と解説

内視鏡内科 消化器内科(胃腸内科)内科

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すい臓がんの症例写真と解説

内視鏡の症例 すい臓がん

すい臓がん-1
すい臓がんのCT画像です。すい臓の端、膵尾部に黒い塊が見られます。造影剤を使用したCT画像で黒く抜ける、典型的なすい臓がんの所見です。
すい臓がん-2
すい臓がんの超音波内視鏡画像です。黒い塊として映ります。この画像では、超音波内視鏡から針(穿刺針)を出して、すい臓がんの細胞を採取する手技を行っています(超音波内視鏡下吸引生検法)。

すい臓がんとは?

すい臓がんは近年、患者数が増加しているがんの一つです。国立がん研究センターがん情報サービスの2018年統計では、男性の第4位、女性の第3位で多いがんと報告されています。年齢別では、60歳を境に増加し、年齢ごとに罹患率が上昇します。すい臓がんの90%以上は、すい臓の中の膵管という組織から発生します。膵管は、すい臓で作られた消化酵素(食物を分解する体液)を腸へと運ぶ役割をしています。すい臓がんが膵管にできると、この消化酵素の流れが悪くなり、膵管が拡張することがあります。この膵管拡張という所見を早く見つけることが、すい臓がんの早期発見に大きく役立ちます。この膵管拡張は、腹部超音波検査(腹部エコー)で見つけられることが多いのですが、内視鏡を使用した超音波検査である、超音波内視鏡ではより詳細に、明瞭に確認することができます。

すい臓がんの症状とは?

すい臓は、体の後ろにあるため、すい臓がんは症状の出にくいことが特徴です。初期のがんでは、症状はほとんどないことがおおいのです。定期的ながん健診が必要である訳です。がん健診としては、血液検査と腹部超音波検査(腹部エコー)が重要です。
すい臓がんは進行すると、体重減少、背中の痛み、みぞおちの痛み、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)などの症状が出てきます。またすい臓は、血糖値を調節するインスリンというホルモンを作っています。このため、すい臓がんの進行により、糖尿病を起こすことがあります。

どんな人がすい臓がんになるのか?

すい臓がんの危険因子では、

1
家族にすい臓がんの方がいる
2
慢性膵炎がある
3
膵のう胞がある
4
糖尿病がある
5
喫煙

等、があります。

血縁がある家族に2人以上のすい臓がん患者がいるときには、リスクは7倍となります。また慢性膵炎では、すい臓がん発症リスクは12倍です。糖尿病を日頃からお持ちの方で、急に血糖値が悪化した場合には、すい臓がんのリスクが急上昇しています。

すい臓がんの検査はどのようなものがあるか?

すい臓がん検査には、健診レベルと行う、血液検査(腫瘍マーカー等)と腹部超音波検査(腹部エコー)を初めとして、精密検査であるCT、MRI、PET-CTや超音波内視鏡があります。どの検査も一長一短がありますが、最も感度の高い検査方法としては、超音波内視鏡が報告されています。当院の超音波内視鏡ページで詳細に解説していますが、すい臓がん検出率は97.7%と報告されており、すい臓がん精密検査のうちで、最も高い検出率とされています。

すい臓がんの治療とは

すい臓がんの治療は、手術治療と抗がん剤治療、そして放射線治療を基本とします。

手術治療は、すべてのがん治療でもっとも効果的な方法です。ご存知の通り、手術ができるかどうかはがんの病期、いわゆるステージ(0~Ⅳ期)、により決まります。一般にすい臓がんでは、Ⅱ期までが手術の適応です。手術の適応は、CTやMRI、超音波内視鏡やPET-CTによって決められます。

すい臓がんの手術治療では、すい臓がんのできた部位によってその方法が大きく変わります。それは、すい臓の右側、膵頭部(すいとうぶ)と、すい臓の左側、膵体尾部(すいたいびぶ)によって変わります。
膵頭部にできたすい臓がんは、膵頭十二指腸切除術(すいとうじゅうにしちょうせつじょじゅつ)という、大きな切除を伴う手術方法が選択されます。この大きな手術方法では、すい臓だけでなく、隣の胆管、胆のう、十二指腸を切除します。大きく切除することによりがんの取り残しを防ぐ目的で行われますが、手術後に体のダメージが大きい手術とされます。
一方、膵体尾部の手術では、膵体尾部切除術が行われ、すい臓の一部のみ、または脾臓も切除することもありますが、体のダメージは比較的軽い手術方法です。

放射線治療は、すい臓がんが発生場所で大きくなり、手術ができないと判断されたときに、抗がん剤治療と併せて行います。放射線化学療法と呼びます。また、骨への転移が認められた時に症状の緩和を目的に行われることもあります。

抗がん剤は、手術の前後に行われる抗がん剤治療と、手術ができない方に行われる抗がん剤治療に分類されます。
手術前後に行われる抗がん剤では、抗がん剤を手術前後に投与することで、手術の効果が良好になり、生存期間が延長されることが報告されています。
手術ができない方に行われる抗がん剤治療も近年、大きく進歩しています。抗がん剤は、白血病や大腸がん、乳がんなど、多種多様ながんで行われる治療ですが、その中ですい臓がんに効果のある薬剤を、効果的な投与量で行うことで、以前よりも生存率が良好となるものが報告されています。また、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などの新たな薬物治療も効果が認められており、今後の発展が期待される治療法となっています。