胃潰瘍の話。でもほんとに胃潰瘍?
夜中にキリキリ胃が痛い!
食後にも痛い。
胃に何かできているのではないか?
不安だ!
当院を訪問する患者さんの、胃の症状で胃痛が一番多いです。
それもキリキリとした痛みです。
確かに胃潰瘍は心配です。
胃潰瘍は出血することがあり、吐血といって、血を吐くことがあります。
けっこうな大事件です。
救急車で運ばれこともあります。
結論を先に述べておきます。
- 胃の痛みはまずは重症かどうかの見極めが重要です。
- 原因として多いのは、ピロリ菌と痛み止めです。
- 薬局で買える、とりあえずの治療としては、ガスター10や大正漢方胃腸薬のような内服が良いと思います。
- 痛みが強くても、ストレスの多い生活を送っているときには、胃カメラで異常のない、機能性ディスペプシアの可能性もあります。
また、生魚を食べた後であれば、アニサキスの可能性もあります。
胃潰瘍の症状
軽いものでは、胃痛、吐き気、食欲不振です。
重度のものでは、
- 1
- おなかを抱え込むような、激しい胃痛。
- 2
- 血を吐く、どろどろとした黒い吐物が特徴です。
- 3
- 黒いドロドロとした、コールタールのような便(タール便)です。
これらの症状では救急センター受診がぜひとも必要です。
胃潰瘍の原因
胃潰瘍は原因があります。がんと違って知らないうちにできるものではありません。
原因が除去できれば、胃潰瘍になりにくくなります。
第一に考えるのは、ピロリ菌、正式名称はヘリコバクターピロリです。
ヘリコバクターピロリは胃に生息する細菌で、これが胃潰瘍の原因となります。
胃カメラを受けて、ピロリ菌感染が確認できれば、飲み薬で除去することができます。
ただピロリ菌が原因でできる胃潰瘍は痛みが少ないことがあり、注意が必要です。気づかないうちに重症化することもあります。
現在とても多い原因が、バファリンやロキソニンに代表される解熱鎮痛剤の飲み薬です。膝や腰の痛みや、かぜ症状の治療のために服用されることが多い薬です。
以上の2つが主な原因で、
皆さんが考える、ストレス、は意外に原因としては少ないのが実情です。
ストレス性の胃潰瘍は、くも膜下出血などの脳卒中や、重症のやけどが原因で起こる、と報告されています。これは、集中治療室で治療することになりますので、かなり大きなストレスが原因となっていると思います。
胃潰瘍と思ったらとるべき行動
先ほどの重度の症状、激しい胃痛、黒い吐物、コールタールのような便では、救急センター受診が良いと思います。
軽い症状では、後日の病院受診でよいと思います。取り敢えずの治療薬として、薬局で買えるお勧めは、ガスター10や大正漢方胃腸薬などです。
胃潰瘍とよく似た胃腸障害
ご本人は、相当深刻なので、うかつに大丈夫ですよとは言えませんが、ストレスを感じているとしたら、多くの場合、胃潰瘍ではありません。
胃カメラで調べてみるとわかりますが、胃潰瘍はなくて、けっこうきれいな胃だったりします。患者さんも拍子抜けな感じです。
病名は、機能性ディスペプシアといいます。
胃潰瘍によく似た症状と、胃カメラで確認されるきれいな胃は、機能性ディスペプシアの可能性の特徴です。
ストレスやコーヒーなどの刺激物で起こることもあります。
患者さんが感じる痛み、症状は胃潰瘍と同じようなものなので、見分けがつかないことが多いのです。
最近、気を付けたいのはアニサキスです。胃の激痛ですので、胃潰瘍と紛らわしい病気です。
サバやイカなど、寿司や刺身に紛れ込んでいる寄生虫です。アニサキスは、胃の中に入ると、強酸である胃酸にびっくりしてしまいます。アニサキスが胃に吸い付いてしまい、胃の痛みを生ずる病気です。
寿司や刺身は夜に食べることが多いので、夕食後に起こりやすいようです。
ちなみにアニサキスは、胃カメラで簡単に除去することができます。
まとめ
〇 胃の痛みはまずは重症かどうかの見極めが重要です。
〇 胃潰瘍には原因があります。
〇 取り敢えずの治療もありますが、意外と別の病気の可能性もあります。胃カメラを受けることを考えましょう。